容疑者Xの献身
「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確かめるのとでは、どちらが簡単か」
推理小説は好きで、特に東野圭吾の小説は好きでよく読む。論理にあらがないし、かといって論理がむき出しにならず、娯楽として楽しめるところがいい。台詞が自然なのもいい。この小説の内容は、数学者が企てた完全犯罪を主人公が暴くというもので、結末が衝撃的で非常におもしろい。
冒頭の台詞は物語の終盤で容疑者の数学者が主人公に対して言う台詞で、これがこの小説のテーマである。この問題はなにも数学や犯罪の世界に限ったことではなく、われわれの日常生活でも常に問い続けなければならない問題である。しかし、現実の世界はすべてを自分で考えて答えを出すには複雑すぎる。これに対して、今の世の中は便利で、様々な事柄に対して既に解答が用意されていることが多い。特にウェブの功績によるところは大きい。しかし、その解答が正しいかを自分なりに証明するには、それなりの労力を必要とする。解答を鵜呑みにするという方針は方針として認めるが、果たしてそれで自分の人生を生きているという実感は得られるのだろうか。
冒頭の台詞はあるいは仕事をする人にとっての大原則でもある。複雑で巨大なものは多くの人の分業によって成り立っている。冒頭の台詞は、個々の仕事を統括する立場にある人への直接の問題提起でもあるし、個々の仕事している人への結果の出し方のアドバイスでもある。
